6月20日 2投目の竿先に熊が居る
いつも同行するS氏が用事があり、今日は単独釣行だ。新緑から深緑へ、林道は両脇から枝、葉が生い繁り緑のトンネル状態。ところどころでポッカりと枝葉が無く、雲の無い真っ青な空が覗く。その林道沿いの本流を一人でゆっくり遡行しようと下降入渓する。
本流と言っても舘の主人の入る渓はやっぱり藪沢の様相だ。水量が極端に下がった。このまま夏場を越せるのか心配になってきた。岩魚の居着くポイントも限られてくるだろう。瀬尻は浅く、狭まり、そこでユラリユラリと出来なくなる。
渓沿いに何人もの足跡がある。下降しやすい渓だし、又遡行するにも楽な落差の低い渓のため、週末には必ず車が止まっている。
今日の1投目に、朝の挨拶に喰いついて来た8cmの岩魚君。針に付いた餌のぶどう虫を飲み込めないくらい小さな、昨秋生まれたばかりの幼魚だ。2回シャターを切り、ダメージを与えないうちに早く大きくなれよと針を外す。
先の見えないカーブを曲がり、2投目を落ち込みの左ピンポイントに餌を放り込む。先に黒い動くものが居る。落ち込みの上、竿先10m程先に。熊だ!と直感した。幸いな事にその熊は後ろ向きだ。そんなに大きくない3歳熊程度だ。こっちに真っ黒く丸い背を向けて、瀬の右岸で何かを盛んに喰っているように見える。後ろに居る俺様にはまったく気が付いていない様子だ。デジカメを出したいが、振り向かれたらこの至近距離ではちょっと大変な事になりそうだ。そおっと竿をたたみ仕掛けは捨てて後ろに引き下がる。カーブを曲がるともう熊は見えない。見えないとかえって不安だ。下がっては来ないだろうとゆっくりと渓を下り、今日はもう納竿だと林道をよじ登る。至近距離で向き合った状態で対峙したら大変だろうなといつも考える。幸いに今まで何回か遭っているがバッタリと対峙したことは無い。でも今日のように渓で行き会ったのは初めてだ。林道に上がってから、怖い物見たさで下を覗き込んだら未ださっきの所に居たが、すぐ向かいの壁に消えていった。
いつも、のんびりと岩魚釣りをしているときは、熊のテリトリーを侵害していることを完全に忘れている。熊鈴をチャリンチャリン、カランカランと賑やかに鳴らし。熊さん、ソコノケそこのけ釣り人が通る、 と森の中、渓を我がまま顔で釣竿を振り回し、岩魚を追っかけて、山菜を採る。まるっきり自分だけの世界で遊んで、楽しんでいる舘の主人がみえる。少しは熊、いや、森の住人、山親父に許しを請うて遊べ。山で、渓で遊ばしてもらっているんだということを忘れるな。
釣行時、いつも携行している熊対策用品。熊鈴は低音、高音の2個下げている。同行者との連絡用も兼ねるホイッスル。獣の匂いがしたり、新しい食み痕なんかあるとホイッスルを吹きます。熊スプレー、カウンターアソルト。フクロナガサ7寸。
今日は、熊鈴も何の役にも立たなかったようです。それにスプレーもナガサも使ったことはありません。
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