2  棲家  生息域の渓

   居付き場所の確保、隠れ場所を探す目、自分の淵、ここが俺の棲家、テリトリーだぞと他の岩魚を
     寄せ付けない、それに俺たちは変温動物と言われて冬季の水温の低い時期には動きが鈍く、活
     動が落ちて岩陰の棲家でジイットして冬眠に近い越冬生活をしている。しかしその間に流域を移
     動する仲間も居る、夏から秋にかけては源流域まで遡上する、それから初冬に水温が下がり始
     める頃には中流から本流まで下がり、春の水温が上がる時期まで待つ、融雪、雪代時には
     流れの勢いもよくなり酸素量が十分となり、俺たち岩魚も勢いついて中流域から源流域へと遡上
     を始める。しかし、今時の流域はその流れの途中に人間社会が作ったダムが出現し、又、堰堤
     が造成され、俺たちをそこに閉じ込めてしまい、俺たち岩魚の棲家と言っても結局は人間がその
     流れと居付き場所まで決め込んでいる。

     

      未だ水温は3℃から4℃、俺たちが動き出せるのは5℃から上なのだ、流れに水温計が在るよ
     うに俺たちは敏感に暖ったくなるのを感じれるよ、山並みに蓄えられて、それが年間とうして浸み
     出してくる、支流の支流、そしてもっと支流の支流から流れ出て、その渓は徐々に勢いついて、
     流れも広く、深くなる、それを俺たち岩魚の棲家としている。

     


         

           滝壺は恰好な餌場、場所取りで勝った、俺たち一番のデカが構えている
           棲家としても最高の淵が在る     岩見川支流三内川支流

   海降型は俺たち日本の岩魚には少ないようだ、海は水温が高く、下がらないので河川滞留型、
     陸封型がほとんとだ。日本海でも東北のほうがちょっと多い、エゾイワナが海に下がりアメマスと
     して河川に戻ってくる、これは山形、秋田県以北でダム、堰堤の下流域を棲家として比較的水温
     が低い海域で降海する仲間がいるのだ。
   ダム、湖沼型は、ここを生息域として上流へ遡上もしないし下降ももしないでまるっきり居付いての棲
     息タイプとダム、湖沼に生息して産卵活動には上流に遡上するタイプ、何れにしても、ここは食料
     が豊富、それもウグイ等小魚が主体、肉食で栄養確保をしてドンドン デッカクなる、尺以上、40
     cmから60cm位のも居るんだよ。俺たちの仲間では異常とも見える成長だよ。

   俺たちは、源流、源頭の魚族と言われながら、時には海抜100mからでも棲めるのだよ。
     本流から支流へ、さらに細い薮沢へ、それも渓とは言えないくらい細く、穏やかな小川、そのよう
     な流れでも俺たちは餌を獲って生きているのだ、それが自然豊かな里山の流れでダムも堰堤も
     無い流域なので、俺たちの棲む流域を単純に源流だ、中流域だ、里川だと分けることは出来な
     いかもしれない。よ。
     源頭に棲む俺らは、養殖場もダムも堰堤も見た事がないし知らない。沢、渓のずうっと奥で生ま
     れ、育ったから、でも最近この森にも林道が伸びてきて渓に崖が崩れて来るよ、それに自然林の
     伐採が始まり、杉の植林だって、ブナ原生林も無くなったよ。オラたちの生きる場所も狭められて
     きた。この流れだけは絶対に絶やさないでよ。

   自然豊かな渓谷を探す目、人間社会の開発の波、ダム、堰堤、そして森林伐採と高速道路と人間の
     都合で自然破壊は続く、ダムそのものは人間社会でだは欠くことのできない存在なのだ、大雨豪
     雨、の洪水防止、電力供給元として、又、農業用水供給、水道及び工業用水としての供給源、等
     々、我々岩魚には分かっているつもりだ、だが今以上の設備構築は要らない、国土で残存してい
     る天然自然森林、山岳、そこから浸み出し渓谷や川に流れだすその流れを取り戻してほしいよ。

    林道も無く、森林伐採も無く、大雨、豪雨等での崩落も無い渓そこに釣人が遡上して来たの
    に警戒するでもなく、悠々と瀬に
とどまっている、これが人間社会を知らない岩魚属、
    俺たちの
本当の姿なのだよ。

      

      夕陽の射し込んだ渓で、その姿を見せてくれた

   胸鰭、腹鰭、尻鰭 の前縁が白く縁どられているのが

   が鮮明にでている

      描かれて、斑紋も綺麗な天然繁殖の仲間だよ

   俺らをいろいろと分けて呼んでいるようだが、体形、形態からの違い 体色、斑紋、斑点、
    生息分布域等、これらからレイクトレウト、
アメマス(エゾイワナ)、オショロコマ、
    ミヤベイワナ、ヤマト
イワナ、ニッコーイワナ、ゴギ、といろいろ人間達が分類している
     ようだが俺たちの棲んでいる渓、谷では斑紋、体形の違いが有ってもその仲間は岩魚の仲間
    だよ、イワナは岩魚で、養殖岩魚、放流岩魚でも

     やっぱり仲間、呼び名は岩魚、イワナだよ。


   先人の滝上放流
   マタギ、炭焼き、山菜採り、キノコ採り、職漁師、と里山に近い集落の先人たちに食料として、また周
     辺の旅館、温泉宿への販売魚としての岩魚は重要な商品だった、その為には安定した生息数と
     捕獲の拡大の為に職漁師が中心になって生息域の拡大で渓の奥へ、奥へと滝上に持ち上げて
     放流、されにもっと奥の滝上に放流とその生息域の拡大を図った。それが人間のワガママと言え
     俺たちの自然繁殖の助けになったのだ。今、釣竿を持って遡行してこの滝で魚止めかなと思って
     も、その上に竿を出すとそこにには岩魚が生息しているだ、先人たちが、いかに俺たち岩魚を大
     事にして、その生息域を守ったのか計り知れない。

      
             滝上、滝上と先人がオラたち持ち上げてくれた



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             俺たち 岩魚の目線   もくじにもどる