5  山、渓にはいろいろあるよ

   
(1) 仲間が鳥に喰われる

      釣人の身勝手な遊びから身を守る目、今となればこれが一番難しいよ。
     釣人は、俺たちのことを知れば知るほど巧妙になり、我々の棲家とする里の渓から源流、源頭
     へとよじ登ってくるよ、餌釣り、ルアー釣り、フライフィッシング、テンカラ釣り、といろいろあるよう
     だがそんなことはどうでもいいことだよ、放流してよ、放してよ。
      俺たちは人間の釣り針は避けなければならない、騙しの虫、でも、他にも気を付けなければな
     らないのが居る。次の画像のように、俺たちの仲間がゴイサギに咥えられてしまった。俺たちを
     狙う山の鳥たちはカワセミ、カワガラス、それにカモ類と、俺たちと対峙する鳥たちだ、落下昆虫
     が水面で バッシャ バッシャしているのに喰いつこうとしたら、このゴイサギに狙われていた、
     逆に喰いつかれてしまった、尾を咥えて頭を岩に何度も、なんども 叩き付けられて、その後に
     呑み込まれたよ。釣人はリリースしてくれるのにゴイサギはそうはいかないようだ。、

     

            

          
                         ツノリカモ

   (2) 砂利呑み込む仲間

     砂利、小石も呑み込むよ、大雨激流の前兆、雪代濁流の前兆、それを前日、前々日からの予知
     能力、俺たち岩魚にはそれがある。何のために、自分の身を激流から守るために、味も旨みも
     無い砂利、小石を飲み込んで自らの体重を確保してその流れに流されないように構えるのだ、
     もちろん自分の棲家、流れの無い隠れ場所を確保しているはず、しかし、そこすら激流で、かき
     回されてしまい自らの体重で其処に留まろうとする。

                  


   (3) 清流に赤褐色の流れ
     何だろう、このような鉱物資源かなと思われる赤く濁った流れもある、これも俺たちの棲息、形態
     に影響が出るのだ、しかし、これが鉱物資源の影響かな、そうだとしたら鉱山開発されてもおかし
     くないはずなのだ。周辺には過去に鉱山開発されて既に廃坑になった跡地が散在している。
     又、ダムや高速道路、乱伐、伐採等で山々がまるっきりボーズ山となり、ブナ林の頃には十分な
     ほど水を蓄えて、それをながして十分な渓谷であったのが、今では降水時に ちょろちょろ と
     渓に浸み出しているようだ、それがその山、渓の土壌によって赤褐色に染まり、濁って浸み出し
     流れて来るのかな、この渓の源頭部に遡上する度に気になってその浸み出す淵を確認するのだ
     った、オラたち仲間には決して好い棲息区間とは言えないよ。

          
                  雄物川支流 岩見川支流の滝、滝の上


   (4) 熊穴とマタギ

     流の斜面に目を移したらこの深そうな穴、熊さん親子の穴だ、冬眠出産の為の穴だ。入り口を
     枯れ木で覆って中は見えないようにはしているのだがデッカイ穴だから中まで見えるよ、ここで
     小熊が生まれ育ったのだ。熊穴にはいろいろあるようだ、倒木が下り斜面に倒れた穴、倒木が
     登り斜面に倒れた穴、岩穴、太い立木の根元に掘り込んだ穴。春熊猟のマタギはその穴の位置
     を熟知しているとのこと、俺たち岩魚の領域は熊の棲息域でもあり、ブナ、ミズナラ等広葉樹の
     分布域ともピッタリ合致する

     
              2016.9.15.三内川支流 滝上 アオリの熊穴

     熊穴をオラたちもよく見るよ、春には生まれたばかりの小熊が周りを遊びまわり渓の淵迄下りて
     来て渓に入って来るよ、ツキノワグマはここで繁殖するのだ、やっぱし俺たちの仲間だよ。

     
                2008.6.14.白子森東斜面   バフリの穴

     
              2014.9.7. 三内川支流 斜面 倒木巨樹の根元の穴

         
          三内川支流 斜面 巨木の根っこに熊穴 中に入ってみた、大人がゆっくり2人入れる

            
             2004.5.8.春熊猟の阿仁比立内マタギに白子森東斜面ブナ林で逢った
     そこでシカリに話を聞くことが出来た、入渓箇所の林道に軽トラックが5台止まっていたのが
     春熊猟のマタギ達の車だったのか、総勢12名と少ないと言っていた、1本の沢から勢子が追い
     上げて、尾根超えをして隣の沢に下ろす、そこには ブッパ(鉄砲撃ち)が待っていて撃獲った。
     棲息数調整猟とのこと,、その年次での秋田県の場合、1000頭が調整頭数とのこと、それを今
     、上で ケボカイ(解体)しているよ と言う。手元にトランシーバーが有る。ブナ林、そこに育って
     いるのは熊だけではない、俺たち岩魚の棲むには最高の生育環境なのだ。


   (5)  禁漁区設定と漁協の成果

     俺たち、天然繁殖岩魚を守ってくれる為なのかな、それだけではなさそうだ、天然繁殖していた
     渓で、釣も楽しめた渓、そして次年度も楽しめる様にリリースしながらの釣人だったよ。そこを
     禁漁区にしたようだ。それから4年、禁漁区の看板が無くなって釣人が又入ってくるのかな、
     やっぱり来たよ、ブドウ虫に針の付いたのを下げて、竿を振り回している。仲間を釣り上げたよう
     だが、なんにも喜んでいないようだ、そうか、乱れ斑紋だ、体色が違ったりと、前のこの渓に居た
     岩魚たちとあまりにも違い過ぎて驚いているのだ。前からこの区間に棲息している俺たちの仲間
     は一番上流に居付いている天然魚と言われているのだ、禁漁区でも下流には放流された仲間た
     ちとそこで繁殖した野生魚が居付いているようだから釣人はその仲間を釣り上げて驚いていたの
     かな。

     

      
 『天然イワナ保護育成の為』 本当かな?               オラは天然岩魚どよ

     

     天然魚、それに天然魚と放流魚の交配で増殖した野生魚、養殖された放流魚と禁漁区間の設定
     された箇所での俺たちの生息も容易でないんだ、区間を管理している漁協も大変だとは思うよ、
     釣人は自然をもっと大切にしなければいけないよ、俺たち岩魚を守りながらの釣りを楽しんで。


   (6)  アメ流し、毒流し

      むかし、昔から、俺たちも岩魚だけでなく川の中流から上流にかけての支流等での毒流し、
     ずーっと やられてきた、秋田でのアメ流しはトコロを使い、全国的には山椒を使われたようだ。
      集落の行事、祭りごと、としてアメ流しをしていた地区もあったそうだよ。

      トコロの根、山椒の木、を乾かして粉にする、それに灰を混入して流れに流されるとオラの仲間
     が フラー フラー と流れに浮き上がる、そこを掴まえられたのだ、一時的に神経が麻酔状態に
     なっていたのだ、幸い捕まらなかった仲間は暫くすると元に戻り元気に棲家に戻ってきた。

      まったく、人間の身勝手な魚獲りだよ、と言ってもこの漁法自体は川魚を確保して生活に潤いを
     持たせる漁獲方法だったようだ。しかしそれが日本では昭和26年に法的に禁止となった。でも
     しばらくはやっている人がいたようだよ、舘の主人が昭和の終わり頃に山奥の細い渓で何匹
     かの岩魚がフラ フーーラ と流れてきたのを見たようだよ。

     電気ショッカーと言うものもあったよ、とっくの昔に禁止漁法となったが、俺たちもいろんな事で
     苦労してきたよ、人間のワガママから。

      
             トコロの花                     トコロの実


   (7)  異形個体は渓の山野麻生リンドーにも

      本流から支流へ、その奥の支流に入り3連滝を巻く、しばらく遡行し渓に横たわる流倒木、
     その下から、俺たちの仲間が針に掛かってしまった。その流倒木に根を張り花を咲かせている、
     山野草、たぶんリンドウの蕾とダイモンジソウ。  2008,9,18

            

       釣人が見つけた時には蕾が一つ、ダイモンジソウと一緒に根を張り、花を咲かせていた、
      蕾2個は発見して2年目の秋、葉、すぼみの根元、が従来のリンドウには無い姿、リンドウには
      間違いないのだが、ツルリンドウ、テングノコジヅ、とも違う。
      陽が射し込まないと花は咲かないようだ、それに秋遅く花が終わってからの姿が実が生ってい
      ない、ツルリンドウ、テングノコジヅは赤い実を着けるのに。日照不足と倒木に根ざしていたの
      で貧栄養が原因での異形突然変異かも。
      山渓はいろいろなのだ、花が咲くと俺たち岩魚の餌となる飛翔昆虫が飛び回るよ。
      でも、姿を見てから4年目の秋に豪雨でこの根を張っていた流倒木が又流されてしまったので
      根ずいていた変異個体リンドウもダイモンジソウも倒木と一緒に見えなくなってしまった。

        
                   2年目の秋 蕾が2個

                  
                  花の終わった後  赤い実は付かなかった


   やっぱり分からんよ、岩魚って何者なんだ、魚なの、養殖放流魚は別として、
     体色は白色、黄色、だいだい色、赤色、朱色、緑色、黄金色、真っ黒色
     斑点もいろいろなんだよな、岩魚なのに白斑点の無いものもいる

           食は完璧に肉食系だな
           生息範囲は    河川型       中流域から源流域を遡上、下降する
                      ダム、湖沼型   下降しての生息域、そこから支流に産卵遡上
                                  デカが多い
                       降海型      海と川を行ったり来たりの棲息、アメマス

                       沢、渓が違うと顔が違う、色が違う、体形態が違う
                       生息環境からか、遺伝子要因か
                       環境は主に水温の違いかな
                       遺伝子要因    生息域を移動しないで狭い範囲での
                                  下降、遡上での繁殖、隔離生息域での
                                  近親交配による繁殖




   春、未だ雪のある渓、水温が5℃〜6℃位になるとちょっとづつ動き出して餌を探す、
           そこに、ブドー虫が流れてくるから喰いついてしまうよ、針が付いて居るなんて
           知らないよ、そして、さらに冷たい雪に上げられた、釣人って勝手だよ、
           早く、流れに戻してよ。

         

          舘の主人が岩魚になりきっての画像や文面でしたが なりきれていませんな?
          なお表示画像は 山釣り釣行記 画像とダブッテいますよ。

              岩魚の舘   HP   http://iwana-no-yakata.sakura.ne.jp
                       Mail   a-iwana@cna.ne.jp


               俺たち 岩魚の目線    もくじにもどる